Kris McDaniel「延長した単純者」

http://philpapers.org/rec/MCDES
McDaniel, Kris (2007). Extended simples. Philosophical Studies 133 (1):131 - 141.

  • 1. 延長した単純者
  • 2. 単純なものの形状
  • 3. 延長と部分性

エクステンデッド・シンプルズ!!(かけ声)
延長した単純者とは、(真)部分をもたないが、広がりをもつもののこと。
この論文は延長した単純者は存在しうるという議論をしている。


メインの議論は「ヒューム主義の議論」というやつ。
これによれば、ものの形状は内在的性質と思われているが、実際には外在的性質である。
なぜか。ものxが形状Sをもち、さらにある空間Dを占めるとよう。このときxは形状Sをもち、xが占める空間Dも必然的に形状Sをもつだろう。形状Sが内在的性質であるとすれば、xとDはそれぞれ偶然的に内在的性質Sをもち、しかも両者がともにSをもつことは必然的であることになる。
著者によればこれはおかしい。
偶然的内在的性質FとG、基礎的関係R、および二つの異なるものxとyの間に以下が成り立っていてはいけない。

  • 必然的に: Rxy ← (Fx iff Gy)

(これがなんでおかしいのかという議論はこの論文ではあまりなされていなかった)。


以上より、著者はものの形状が外在的性質であることを擁護する。さらに上の原理から、延長した単純者の存在可能性が導かれる。
延長した単純者が必然的に存在しないとしよう。この場合延長をもつxが空間Dを占めるとき、xもDも必ず真部分をもち、xの真部分は必然的にDの真部分を占めることが帰結する。xとDには必然的に部分構造の対応が見られる。
部分構造は偶然的な内在的性質なので、これは上の原理に抵触する。よって、延長した単純者は存在しうる。


さらに、形状が内在的性質でないという論点は、別の点でも延長した単純者を救う。
延長した単純者に反対するよくある議論は以下のようなものだ。

  • 延長した単純者xを考えよう。
  • xが延長するかぎりにおいて、xは延長した空間Dを占める。
  • Dには、複数の真部分がある(例えば上半分と下半分)。
  • よって、Dの真部分を占めるxの真部分がある。

この結論を導き出すもっともらしい前提は、おそらく次のようなものだ。
「Dの上半分においてxがもつ内在的性質Fがあり、xはDの下半分においてFをもたないとすれば、xのFをもつ真部分とFをもたない真部分がある」。
例えばxはDの上半分において円柱状であり、Dの下半分において円錐状であるとしよう。このとき、形状が内在的性質であれば、xの円柱状の真部分とxの円錐状の真部分があるということはもっともらしい。
でも、形状は内在的性質じゃないのでこれは成り立ちませんーというのが著者の言い分。