James Lenman「行為の理由: 正当化対説明」

Lenman, James (2010). Reasons for action: Justification vs. explanation. Stanford Encyclopedia of Philosophy.
http://philpapers.org/rec/LENRFA-3
http://plato.stanford.edu/entries/reasons-just-vs-expl/


スタンフォード哲学事典の記事。5節で「説明理由/正当化理由」というペアと「動機づけ理由/規範理由」というペアのちがいについて説明している。ややこしいし書き出さないとわからない気がしてきたので書き出す。「説明理由」と「動機づけ理由」というのはほとんどの場合同じ意味で使われるし、区別しなくてもそんなに問題ないのだが、たまにここをわける人がいるという話。


マイケル・スミスの場合

動機づけ理由とは?
信念、欲求など心理状態の複合体。行為を動機づけ、説明のために持ち出される。この説明は因果的なものとされる。
規範理由とは?
ある行為が正当化されているかどうかに関連する真理。

この立場では、動機づけ理由と規範的理由は、形而上学的に別のもの(片方は心理状態であり、片方は事実である)なので、明確に区別される。

ところが規範理由も説明の役割を果たす。「xをすべきだ」「xすることがのぞましい」という規範理由についての信念は、行為者がxする欲求をもつことを引き起こす。

この意味で規範的理由も説明的である。しかし、それは動機づけではないとされる。ここで規範的理由(というか規範的理由についての信念)が欲求をもたらすプロセスは、合理的プロセスであって、因果的なものであるが、動機づけではない。

規範的理由(事実) -----正当化-----> 行為
動機づけ理由(信念・欲求) -----動機づけ----> 行為
規範的理由についての信念 ---合理化的説明---> 欲求

当然ながらこれを批判する人もいる。
特にめんどうなのは、こうすべきだという信念(規範的理由についての信念)が欲求や行為を引き起こしうるかという部分で、ここはそれこそヒューム以来の議論のタネである。