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Jerrold Levinson「芸術的価値と個人的趣味」

Jerrold Levinson, Artistic Worth and Personal Taste - PhilPapers

Levinson, Jerrold (2010). Artistic Worth and Personal Taste. Journal of Aesthetics and Art Criticism 68 (3):225-233.

短いが、やたら難しかった。

わたしたちは芸術的趣味の陶冶みたいな考え方をすることがある。最初はよくわからないから、聴きやすい音楽などを聴いてるけど、だんだん耳が肥えてきて、玄人好みの音楽を聴くようになるとかそういうの。

趣味の完成は、ヒュームのいう「理想的批評家」の概念によく結びつけられる。理想的批評家は、価値ある作品すべてを、そしてそれだけを好むものとして措定された理想上の概念だ。

しかし、一方で、美的な趣味というのは、個人的なものでもある。どんな作品を好むかは、その人のその人らしさを構成している。趣味の多様性はそれ自体価値のあることではないのか?

レヴィンソンは、認識論的価値や道徳と美的趣味を対比させている。例えば、信念に個性というのはあまり必要ない。現実問題として、みんな信じていることはバラバラだが、真なることがあれば誰もがそれを信じるのがよさそうだ。また道徳に関しても、道徳的に悪いことというのは誰もがすべきではないことであり、道徳的個性に価値を見出す人はほとんどいない。

ところが芸術作品の場合、趣味を陶冶し、誰もが価値ある作品を好むにいたるという収束の規範性も、個人的趣味の多様性もどちらも認められている。レヴィンソン先生は、この短かい論文で上記のような対立(趣味の完成と、趣味の個別性)をたてて、これを調停する案をいくつかだしている。