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グッドマンブックフェアの余白に

ブックフェアに余白ってあるんだろうか。

下記のブックフェアで、「芸術形式/芸術のメディア」の選書を担当させていただいた。

新しい古典がやってくる!『芸術の言語』刊行記念フェア「グッドマン・リターンズ」特設サイト| 企画:慶應義塾大学出版会 協力:勁草書房

選書した本に関連して、ブックフェア冊子に書いたこと以外を記す。

私の担当は最初「ポピュラーカルチャー」だったけど、グッドマンと関係なさすぎてあれだなと思ったので「芸術形式/芸術のメディア」という項目にさせてもらった。映画、マンガ、小説、絵画、ダンスなど、いろんな芸術形式や芸術のメディアに関する本を選んでみた。

選書のあれこれ

選書の際に意識した方針は、

  • (1)『芸術の言語』と一緒に読んでおもしろそうな本。特にメディアの特性に関係ある本にする。
  • (2)手に入りやすいものにする。
  • (3)なるべくいろんなメディアを入れる。
  • (4)ぴったりくる本がなければ古典・基本書にする。

マンガとか映画は歴史が浅いせいか、メディアの特性に関する本がたくさんあるんだけど、美術とか文学はちょっと選びにくかった。文学理論の教科書はあっても、「小説とはどういうメディアなのか」という本は見当らない。

入れなかった本

選書しているときにまだ出版されていなかったので入れなかったけれど、『マンガ視覚文化論』を入れてもよかった。この項目じゃない気もするけど、『社会にとって趣味とは何か』とか。

あとはグッドマンの弟子でもあるチョムスキーを入れるべきだって言ってたんだけど、入らなくてそこは残念だった。

形式言語理論の祖はチョムスキーで、チョムスキーがどこからそのアイデアを学んだかというとおそらくグッドマンとクワインなので、『白と黒のとびら』とか入れてもよかったなあと思ったり。

バザン『映画とは何か』

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映画論・映画批評の古典。最近岩波文庫で出ている。選書に際してはじめて読んだけど、予想以上におもしろかった。

グッドマンとの直接的なつながりは薄いが、この本は、分析美学の議論ともつながりがある。分析美学の世界で有名な「写真のインデックス性」という議論は、本書の最初に入っている「写真映像の存在論」が元ネタといってよいものだろう。分析美学における写真のインデックス性の議論の出発点は、ウォルトンTransparent Picturesだが、ウォルトンは明らかにバザンを念頭に置いている*1

バザンは、ふわっとした感覚的な表現で写真のリアリズムを強調しているが、ウォルトンの論文は、この立場の明確化を試みたものだと言えそうだ。こんな風に「批評家がふわっとした形で言ったことをもっと明確に言い直してみる」というチャレンジは、分析美学という分野では、重要なアイデアの源泉だと思う。リアリズムの話以外だと、西部劇論などもおもしろいよ。

あとついでに言うと、本書の訳者解説でも指摘されているように、ロラン・バルトの有名な写真論(『明るい部屋』)もバザンの影響を受けている。バルトも写真のインデックス性みたいなことを言ってるんだけど、実はその背景にあるのは、ウォルトンもバルトもバザンを読んでるからなんだなというのは今回はじめて気がついた。

『マンガと映画』

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今回たまたまマンガ関係が多くなってしまったのだけど、これは文字通りメディウムスペシフィシティ(メディアの特性)を明示的に扱った著作。分析美学では、ノエル・キャロルのメディウムスペシフィシティ批判が有名なのだけど、本書はその辺の議論も紹介している。

ちなみに本書は後半の方がおもしろいので、読んでない人は後半まで読んでみることをおすすめする。趣味もあるかもしれないが、個人的には前半の理論的整理があまりピンとこなかったのに対し、後半の「マンガの時間性」などを軸にした作品分析は非常におもしろかった。

文体練習

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なんか小説とか入れたいなと思っていれた。おもしろいし、非常にグッドマン的なので読んだことない人はぜひ。

他にどんな本を選んだか

書店に足を運んで見てほしいが、いくつか並べておく。

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*1:バザンの論文をエピグラフに引用しているし、論文の冒頭で、写真のリアリズムを強調した人たちとしてあげられているのはまずバザンである。