Moltmann, Friederike (2007). Events, tropes, and truthmaking. Philosophical Studies 134 (3):363-403.
http://philpapers.org/rec/MOLETA
目次
- 1. 名詞化の種類
- 2. トロープの名詞化
- 3. 出来事の名詞化
- 4. 派生的対象としての出来事
- 5. 出来事に関するデイヴィドソンの説明
- 6. 名詞化と真にすること
- 7. 結論
動詞の名詞化などの現象に対して、真にするもの(真理メーカー)を用いた意味論を提案している。
まず、名詞化の種類をいくつかにわけている。
Moltmannによると、トロープや出来事を指示する名詞化というのがある。
「太郎のかっこよさ」(太郎はかっこいい)
「太郎のジャンプ」(太郎はジャンプする)
※括弧内は元の表現
これらの名詞化は、元の表現によって部分的に規定されるが、それにつくされない対象を導入する。
事実に言及する表現「太郎がかっこいいという事実」と、トロープに言及する表現「太郎のかっこよさ」を比較するとわかりやすい。
例えばトロープや出来事に言及する表現は、程度や比較の表現とともに使える。
「太郎のかっこよさはすごい」「太郎のかっこよさは二郎のかっこよさより上だ」は言える
→一方「太郎がかっこいいという事実はすごい」とか「太郎がかっこいいという事実は二郎がかっこいいという事実より上だ」は言えない。
あとトロープや出来事は「よく調べる」などの目的語におけるが、事実はおけないなど、いくつか違いが見られる。
トロープや出来事は、名詞化前の元の表現につくされないあり様(太郎のかっこよさのあり様)を持っている。
また、Moltmannはデイヴィドソンの動詞の意味論に変わるものを提案している。
デイヴィドソンは、動詞の意味論に関して出来事を使った分析をしている。
詳細は触れないが、この分析だと、
「ボールが高速で回転する。」
の論理形式は、
「ある出来事があり、それはボールによるものであり、それは高速であり、それは回転である」
みたいな出来事に量化するものになる。
このメリットは、「ボールが高速で回転する。」から「ボールが回転する。」への推論をうまく表現できること。
ただ、うまく扱えないケースがある。例えば副詞の修飾が累積的な場合がある。
「ボールが突然に高速で回転する。」
ここで、「突然に」は「回転する」ではなく「高速で回転する」という複合的な表現を修飾している。
「突然に、すべてのボールが回転する。」
ここで、「突然に」は「すべてのボールが回転する」という量化を含む複合的な表現を修飾している。
これを扱う時は、複合的な出来事みたいなものを考えないといけないので、デイヴィドソン流の分析だとあんまりうまくいかない。
そこで、それぞれの表現に対応するような出来事を、「真にするもの」として導入してやるとうまくいきますね、という話(詳細は省きます)。
感想
デイヴィドソンみたいに、動詞の引数を一つ増やして、動詞が出来事を引数に取るってだけだとうまくいかないケースがあるのはわかった。
そこでトゥルースメーカーみたいな任意の表現に対応させられる対象があると便利なのだろうというのも何となくわかった。ただ、否定の扱いとかがややこしくなるんだよね。
動詞の意味論の他のアプローチもよく知らないんだけど、普通はどうするんだろうというのは気になった。