- 出版社/メーカー: OUP Oxford
- 発売日: 2015/06/04
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
https://global.oup.com/academic/product/fictional-objects-9780198735595?cc=jp&lang=en&
ちょっと前に出た虚構対象に関する論文集。フィクショナルキャラクターなどに関する存在論・意味論の最新の話題が論じられている。
最初の3つの論文を読んだ。個人的にはもう少し美学・芸術学的な話題に結びつけたものが読みたいが*1、どれもレベルは高く、この領域の盛り上がりを感じさせる。
- WILLIAM G. LYCAN: A Reconsidered Defense of Haecceitism Regarding Fictional Individuals
- ROBERT HOWELL: Objects of Fiction and Objects of Thought
- DAVID BRAUN: Wondering About Witches
1はフィクショナルキャラクターや単なる可能者に関してこのもの性説haecceitismを擁護する論文。キャラクターなどを性質の集合によって個別化するのではなく、ホームズのホームズ性などによって個別化できると考えても問題はないだろうという方向で議論している。
2はフィクショナルキャラクターなどに関して、前提のもとでの真というアイデアに訴えて説明しようとするもの。この立場では、ホームズは探偵であるといった発言は、ホームズの作品世界の前提のもとでの真理と見なされる。最近のキャラクター反実在論系の人はこの種の立場が多い気がする。
3はホームズやワトソンなど、虚構の個体ではなく、魔女であること、ホビットであることなど、虚構の性質、虚構の種の意味論を包括的に扱うもの。マニアックだしひたすら長いがこの話題に興味があればおすすめ。
*1:最近私もこの辺の話題を扱うことが多いので、ひょっとすると虚構の存在論にすごく興味があると思われているかもしれないが、実はそれほどでもない……。みんながやっていることはそんなにやりたくない……。