AIに本や論文を読ませ、自分用の相互リンクノートを作らせる、という方法を最近試しているのだが、かなり良いのでおすすめしたい。要するに、資料をもとにAIに解説ノートを自動生成させる方法である。
もともとはアンドレイ・カーパシーという計算機科学者がXで書いていた方法を真似したものだが*1、機械学習の研究だけでなく、人文系の読書や研究にも十分使えると思う。自分が読んだ(ないし読んでいる)資料を、AIを使って構造化し、詳細なノートを作る方法である。読んだそばから忘れていく資料が、有機的な文書ネットワークに変わるのが魅力である。
結果から紹介すると、最終的に以下のようなファイル群ができる。これはディアミッド・コステロという研究者のAesthetics After Modernismという本をベースに作ったノートである。コステロの本のまとめがメインで、ところどころコステロが参照しているグリーンバーグやカントの解説が混ざっている。「概念解説」とついているのは、横断的な用語解説のページである。
モダニズムwiki ├── INDEX.md ├── 概念解説 — 美的理念(aesthetic idea).md ├── 概念解説 — 無関心(disinterest).md ├── 概念解説 — キッチュ(kitsch).md ├── 概念解説 — メディア固有性(medium-specificity).md ├── Allison Ch.12 — 美的芸術と天才.md ├── Costello Ch.1 — モダニズムとフォーマリズム.md ├── Costello Ch.2 — グリーンバーグ理論の内部的限界.md ├── Costello Ch.3 — メディア固有性の死後.md ├── Costello Ch.4 — メディア固有性の死後 II クラウスとポスト・メディア.md ├── Costello Ch.5 — フォーマリスト批評の死後 ドゥーヴと「これは芸術である」.md ├── Costello Ch.6 — フォーマリスト批評の死後 II ダントーと「形態の美学」.md ├── Costello Ch.7 — カントの美学とコンセプチュアル・アートの挑戦.md ├── Costello Ch.8 — カントの芸術論の射程.md ├── Costello Ch.9 — カント美学のアクチュアリティ.md ├── Greenberg — Avant-Garde and Kitsch.md ├── Zuckert — 形式の合目的性:カントの美的フォーマリズム再読.md ├── raw
参考として、「概念解説 — キッチュ(kitsch)」のページをGoogle Docsに置いておく。
概念解説 — キッチュ(kitsch) - Google ドキュメント
Docsだとわかりにくいかもしれないが、わたしは手元ではObsidianというアプリでこれを見ていて、Obsidian上では、上の文書が相互にリンクされた状態で見れるようになっている。
また重要なこととして、この解説はすべてAIが資料をもとに書いたものである。ほとんど労力をかけなくても、どんどんノートが充実していくという嬉しさがある。
作業手順
前提としてClaude Codeのような、ローカルのファイルをまとめて触れるAIツールを使う必要がある。触ったことがない人にとってはおそらくこの部分がハードルになると思うのだが、ツールの解説はあとにして、先に作業の流れを説明する。まずノートのベースとなるフォルダを作って、以下のようなフォルダ構造からはじめる。「ファイル1」「ファイル2」は論文など、自分が資料にしたいもの。とりあえずraw以下に資料を入れていけばいい。
(PDFなどのファイルについては、あとでも説明しているように、事前に変換しておいた方がスムーズにいくことが多いが、とりあえず関連ファイルは何でも入れてしまって良い)
- base/
- raw/
- ファイル1
- ファイル2
- raw/
ここまで準備ができたらこのフォルダを指定し、AIに次のように頼む。元ファイルの位置と、保存したいフォルダだけ伝わればいい。
"base/raw"以下のファイルをもとに、base以下にwikiを作っていきます。まずwikiにインデックスファイルを作成し、元資料を一覧します。 次にファイル1のまとめを作成し、元ファイルへのバックリンクをつけてください。
AIが作業を終えると、INDEXとファイル1のまとめができる。この段階で中身を見て、「方向性が違うな」と思ったら修正してもらう。最初の方の作業で方向性が決まるので、最初の方は細かく口を出した方がいい。
いい感じになったらファイル2のまとめも追加させる。ある程度増えてきたら、今度はその中から用語をピックアップして、用語解説ページを作ってもらう。
まとめると、手順は以下の通り。
- ユーザーが元資料を追加
- AIがINDEXを作る
- AIがファイル1のまとめを作る
- AIがファイル2のまとめを作る
- (まとめが増えてきたら)AIが概念解説ページを作る
ある程度形になってきたら、あとは比較的簡単で、ファイルを追加して、「これのまとめも作って」などとAIに依頼するだけである。AIはすでにあるファイルを参考にして、同じような体裁でまとめをつくってくれる。どんどん充実していく自分用wikiのできあがりだ。
ツールについて
ChatGPTかClaudeの有料プランを使っているなら、CodexかClaudeのアプリをインストールするのがおすすめ。細かい使い方を説明するとキリがないのでここではあまり解説しないが、少しだけ説明しておく。以下はアプリ版のClaudeの画面である。「Cowork」のタブ(または「コード」)を開き、「プロジェクト」は、作業手順のところで説明したフォルダを指定する。ObsidianユーザーならObsidianのVaultフォルダを指定すればいい。

もうひとつ割とやっかいなのがPDFなどの扱いである。おそらく資料の多くは、PDFやワードやパワーポイントのファイルだろう。試したところPDFの読解はまだ不安定で、特に日本語文書では失敗しやすい。
このため、できればPDFを事前にマークダウンなどのテキスト形式に変換しておく方がよい。OCR情報つきのPDFファイルであれば、以下のサイトを使えば、比較的簡単に変換できる。他にもツールはいくつかあるが、どれが良いのかはわたしも模索中だ。
また、書籍などのファイルは、章単位で分割して、章ごとにまとめをつくるのがおすすめ。PDFの分割は、以下のAdobeのサイトなどでできる*2。
https://www.adobe.com/jp/acrobat/online/split-pdf.html
また、実際にやってみるとわかるが、ある程度長いまとめを作らせると、すぐにトークンの使用量の制限に到達してしまう。わたしは数時間おきに2ファイル程度を追加するようなスタイルでちょっとずつ充実させていくようにしている。一気にやろうとせず、盆栽をちょっとずつ育てる気持ちで進めると良い。