2024-01-01から1年間の記事一覧

描写の哲学における二視覚システム理論

まえおき 描写の哲学(絵・画像の哲学)における二視覚システム理論について調べたのでまとめる。最近 id:Aizilo さんが近年の描写の哲学の論点を紹介していたので、まあこれも最近のトピックということで。 描写の哲学、再訪:触図からディープフェイクまで -…

『「ふつうの暮らし」を美学する』の手前で

「ふつうの暮らし」を美学する 家から考える「日常美学」入門 (光文社新書 1317)作者:青田 麻未光文社Amazon 青田麻未『「ふつうの暮らし」を美学する 家から考える「日常美学」入門』という本が光文社新書から出ました。日常美学という美学の一分野の入門書…

ダントーの「アートワールド」について

ダントーの「アートワールド」は芸術制度のことではないというのを、人に説明しようと思って、ダントーのテキストについてまとめていた。 実際ダントーの立場を説明しようと思うと、いろいろ大変なのだが、ダントーの「アートワールド」が制度ではないという…

ピピンのフィルム・ノワール論2

前回はこちら。 Fatalism in American Film Noir: Some Cinematic Philosophy (Page-Barbour Lectures) (English Edition)作者:Pippin, Robert B.University of Virginia PressAmazon 前回説明したように、Fatalism in American Film Noirでは、フィルム・ノ…

ピピンのフィルム・ノワール論

ロバート・B・ピピンという哲学者がいる。ヘーゲル研究で有名だが、実は映画の本をたくさん書いている。私はフィルム・ノワールが好きなので、ピピンがフィルム・ノワール論を書いているのを知り、さっそく読んでみた。とりあえず一章まで読んだので紹介する…

ポール・ケリー『リベラリズム』

リベラリズム: リベラルな平等主義を擁護して作者:ポール・ケリー新評論Amazon ポール・ケリー『リベラリズム』(佐藤正志, 山岡龍一, 隠岐理貴, 石川涼子, 田中将人, 森達也訳)を読んだ。 英語のKey Conceptシリーズの「リベラリズム」の巻の翻訳。 政治哲学…

カントの天才論

『判断力批判』の一部で、カントは「天才論」というかたちで芸術作品の創造について論じている。それは『判断力批判』全体のプロジェクトの中では、決してメインのテーマではないのだが、それなりにおもしろい主題となっている。 判断力批判作者:イマヌエル…

『メタゾアの心身問題』

メタゾアの心身問題――動物の生活と心の誕生作者:ピーター・ゴドフリー=スミスみすず書房Amazon ピーター・ゴドフリー=スミス『メタゾアの心身問題』塩﨑香織訳、2023年、みすず書房 『メタゾアの心身問題』を読んだ。前著『タコの心身問題』を楽しく読んだ…