ジョン・カルヴィッキ『イメージ』(John V. KULVICKI "Images")前半(1〜5章) - logical cypher scape
描写の哲学の仕事が紹介されるのはよいことだ。描写の哲学は、美学のなかでもここ十年くらいですごく発達した分野だし、例えば表象文化論などをやっている人にとってもアイデアの宝庫だと思う。私のおすすめ本はLopesのUnderstanding Picturesと上のカルヴィッキのImagesです。
で、あまり関係ないけど↑を見て、そういえばアウトラインシェイプってどういう定義だったかなと思ったので確認する。
確かカルヴィッキの説明はだいぶ省略したものだったように思う。
参照するのは以下
http://philpapers.org/rec/HOPED
Hopkins, Robert (1995). Explaining depiction. Philosophical Review 104 (3):425-455.
pp.440-442
ホプキンズは以下の図を載せてくれている。
この箇所でホプキンズは以下のような状況を想像するように言う。曇った窓の向こうに透けて見えるピラミッドがあり、ピラミッドの輪郭線を指でなぞったとしよう。できあがるものは、ピラミッドの図像だ。図の手前に位置しているのが、指でなぞった図で、奥に位置するものがピラミッドだ。Pはこの図を描く人がいる点。
ホプキンズは類似説を取るので、この状況で、二次元の図像が三次元のピラミッドを描写していると言えるのは、図像とピラミッドの間に何らかの類似関係があるからであると考える。
では何が似ているのか?
ホプキンズによれば角度である。図でピラミッドの底辺ABとPが作る角度APBと、図の中の底辺abとPが作る角度aPbは等しい。CPDとcPdも等しい。
図1が示すように、トレスの対応する部分は、正確に同じ角度をなす。底辺をなぞる線は底辺と同じ大きな角をなし、頂点を表象する点は同じ小さな角をなす、等々。こうして全体として、ガラスの上のマークは、それがなぞるピラミッドの面と同じ鋭角をなす。
ピラミッドが図1のように位置するならば、もうひとつの面もその点に対して、最初の面がなす角とは別の鋭角をなす。ピラミッド全体も2つの面がつくる角からなる鋭角をなす。またしてもピラミッドのこの特徴は、トレスと一致するだろう。トレスはピラミッドと同じ鋭角をなし、その角の内で二つの小さな角をなし、それは二つの面がなす角と一致するだろう
対象がある点に対してなす鋭角を、その点におけるそのアウトラインシェイプと呼ぶことにしよう。
p.441
というわけで、アウトラインシェイプというのは角度のことですね。
ちょっとよくわからないのは、ここでホプキンズは「ある点に対し、ピラミッド全体がなす角」という言い方をしているのだが、そういう言い方って意味をなすのだったっけ。角の集まりと言わねばならない気がするが、なぜか単数形がつかわれている。
↓例えば
Let us call the solid angle an object subtends at a point its outline shape at that point.
余談だが、描写の定義に関してホプキンズがとる戦略を説明しておくと、ホプキンズはグッドマンみたいな類似説批判(図像が対象に似てるって言うけど、あらゆるものはあらゆるものに何らかの面で似ている)に対し、ちゃんと似ているポイントを定義できると示す。次に、上のような類似が実際に図像と対象の間になかったとしても、「そのように経験されればよい」という形で定義を複雑にする(経験された類似説)。という二面戦略をとっている。
ただホプキンズって悪い意味で典型的な分析哲学者というか、どんどん定義を複雑にするので個人的にはちょっと苦手だ。