読んだものを淡々と記録するよ。
Keller, Simon, 2004, "Welfare and the Achievement of Goals,"
http://philpapers.org/rec/KELWAT
趣旨はそれほど共感しないが、書き方はコントロールされていて、わりと好み。
目標達成説(「自ら立てた目標を、自らの努力を通じて達成することは、厚生を高める」)を擁護する論文。
おもしろかったのは、目標達成がなぜ厚生を高めるかを説明しようとしているところ
- 目標の形成にあたって、人はそれによって自身の人生が評価されることになる基準を設定する(「目標は達成できたか」という基準)
- この基準はこの人自身の内から生じたものである
- 従って、この基準を満たしたかどうかは、この人の人生がうまくいったかどうかに影響する
価値判断には、評価基準がつきものだが、ここでは一応、なぜある基準が人生の評価(厚生の評価)に関連するのかを説明しようとしているので、それはよいなと思った。
もう一点は、目標達成説が、厚生の完全な説明ではなく、厚生を高める多様な要素のひとつとしてのみ提出されているところ。
いわく、厚生という概念は、「身体能力」のような概念に似ている。たとえば、「より速く走れる能力」を身につけることは、身体能力を向上させるかもしれないが、ある面だけを向上するにすぎない。身体能力には相互に還元不可能な複数の要素がある(ex. 「重いものを持ち上げる能力」)。目標達成も、これと同じようにあるひとつの面で厚生を向上させるにすぎない。