http://philpapers.org/rec/LAMONE
Lamarque, Peter (2004). On not expecting too much from narrative. Mind and Language 19 (4):393–408.
目次
- 1. 物語の定義
- 2. 構造的特徴
- 3. 指示と真理
- 4. 物語の実践
- 5. 物語の価値
- 6. 物語的同一性と人生の物語
- 7. 結論
ラマルクによれば、物語(ストーリーテリング)の定義は
- ストーリーは見つけられるのではなく、語られる
- 複数の出来事を語る
- 出来事の間に非論理的関係(主に因果関係)が成り立つ
- 出来事の間に時間的な順序がある
こうしたミニマルな物語の定義を前提に、物語の概念に多くを読み込む人たちを批判している。
例えば、歴史が物語であるということから、歴史もフィクションであるという人たちがいる(やりだまにあがっているのはヘイドン・ホワイト)。しかし物語というのはジャンルによって全然違うものであって、すべての物語に共通するのは上記のようなミニマルな特徴くらいしかない。
歴史とフィクションはジャンルの慣習や規範がまったく違うので、フィクションと歴史を過度に重ねるのはよくない。
ちなみに、ラマルクはポストモダニズム批判みたいなのをいろいろなところでやっていて、おそらくかなり内在的な関心があるのだろうが、この論文も前半はそのような話になっている。
個人的に関心があるのは、後半の「人生の物語」や「物語的同一性」の批判だ。
ラマルクによれば、以下のような理由で、人生を物語と見なすべきではない。
- ストーリーは語られるものだが、人生は必ずしも語られる必要はない。
- 私たちは自分の人生に起きたことについて物語を語ることもあるが、それは断片的であり、多くのことを省いている。
- また、物語は特定の視点によるものでしかない。人生を適切に評価するには複数の視点で複数の物語を語る必要がある。
人生の多くの部分は語られないし、語られても断片的なので、物語は人生の統一を与えられないという批判だと思う。