クリティカル・ワード ゲームスタディーズ

最近、ゲームスタディーズ系の論文を読んでいたのだが、フィルムアート社から、吉田寛井上明人/松永伸司/マーティン・ロート編著『クリティカル・ワード ゲームスタディーズ』が出た。(最近ゲームスタディーズ系の論文を読んでいたのでなおさらそう思うのだが)、単純にこれを読むだけで、とてつもない時間が節約できるという点で、大いにおすすめできる書籍だ。

クリティカル・ワード ゲームスタディーズ | 動く出版社 フィルムアート社

ゲームスタディーズに興味がある人々は放っておいても読むだろうから、それ以外の層へのおすすめも書いておこう。ビデオゲームという分野は、映画やマンガやアニメなど、他のメディアと比べて、抽象概念が問題になることが多く(例えば「フィクション」や「ルール」など)、分析美学などの分野とも相性がよい。例えば、本書を読めば、ケンダル・ウォルトンなど、分析美学の理論が応用されていることがわかるはずだ。グラント・タヴィナー、C・ティ・グエンなど、分析美学に出自をもつゲームスタディーズ研究者もめずらしくない。

例えば、本書でも紹介されているグラント・タヴィナーは、ウォルトンの理論を援用しつつ、ビデオゲームの多くを占める作品を「インタラクティブなフィクション」と捉え、インタラクティブ性やプレイヤーキャラクターといった概念を分析している。フィクションの哲学のような分野に興味があるなら、ビデオゲームのような現実の実践への応用も、興味深く読めるだろう。