John MacFarlane『評価感応性』3章の真意味論/後意味論の区別とか

Assessment Sensitivity: Relative Truth and its Applications (Context And Content)Assessment Sensitivity: Relative Truth and its Applications (Context And Content)

真理の相対主義を擁護する恐怖の書、Assesment Sensitivity。
5章くらいまで読んだのだけど、文脈依存性まわりの概念が複雑なのでまとめておく。


3章では、真理の相対主義を特徴付けるとともに、単なる文脈依存性から区別することが目指されている。
単に用語の整理がしたいので真理の相対主義の話はしない。
本文中にあった以下の図に即してまとめよう。

まず以下のようなトイ言語を考えよう。この言語には時間に関する2つの演算子がある。われわれはこの真理条件を以下のように与える。
以下、cは文脈, wは世界, tは時点とする。時点以外の文脈要素ももちろんあるのだが、とりあえず時点だけ考えよう。

「昨日p」 がc, に真である iff 「p」がc, に真である

「これまでずっとp」 がc, に真である iff すべてのt'に真である

これは、文脈-インデックスにおける真理の再帰的な定義になっている。この定義と各世界、時点におけるpの真理さえわかれば、例えば「これまでずっと昨日p」のような複合的な文の真理をえることができる。


しかしこれは不完全だ。なぜかというとわれわれが最終的に知りたいのは「Sがc, に真である」の定義ではないからだ。われわれが知りたいのは、「Sがcに真である」の定義だ。現実の発話において与えられるのは、具体的な文脈であって、のようなインデックスではない。
発話の具体的な文脈から出発し、インデックスの初期値を決定する方法が与えられなければならない。
普通、wとtはcが属する世界と時点で初期化されるのであまりこのプロセスが意識されることはないが、初期値の決定は必ず必要になる。マクファーレンが真意味論[semantics proper]と対比し、後意味論[post semantics]と呼ぶのはこのプロセスのことだ。cからwとtを決定する関数をfとすると、

「p」 がcに真である iff f(c) = かつ「p」がc, に真である

これが与えられてはじめて以下のような再帰的な真理値の決定ができるようになる。

「これまでずっと昨日p」 がcに真である iff f(c) = かつ「これまでずっと昨日p」がc, に真である

「これまでずっと昨日p」がc, に真である iff すべてのt'に真である

すべてのt'に真である iff すべてのt'に真である

なぜこれが重要かというと、文脈-インデックスにおける真理の再帰的定義には現われないが、後意味論にだけ現われる文脈依存的要素もありえるからだ。例えば時点tの初期値は常に発話の時点とはかぎらない。歴史的現在のように、過去の時点が選ばれる状況もある。そしてマクファーレンが擁護する真理の相対主義は、基本的には、後意味論において、文脈における真理が「評価の観点」に感応的[sensitive]であるという立場だ。


本当は命題の話もしようと思ったのだが長くなったのでこの辺で。