Meaning in Life and Why It Matters (The University Center for Human Values Series)
- 作者: Susan Wolf
- 出版社/メーカー: Princeton University Press
- 発売日: 2010/03/01
- メディア: Kindle版
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スーザン・ウルフの講義録。「人生の意味」「なぜ重要か」と題された2つの講義録と、それに対する複数人のコメントがついている。コメントはまだ読んでないが、講義録本体を読んだ。「人生の意味」の方は、人生の意味に関するウルフの立場を紹介するもの。「なぜ重要か」の方では、そのように理解された人生の意味がなぜ重要なものであるのかを論じている。
読みやすいし、ウルフの立場もバランスのとれたものでよかった。なぜか途中の注にはチョコレートケーキのおいしいレシピなども紹介されている(p.51)。
人生の意味に対するウルフの立場の特徴は、「愛の理由」と「主観客観混合説」だ。ウルフが「愛の理由」と呼ぶのは、無生物を含めたさまざまなものへの愛に由来する理由のこと。私たちは、例えば、家族のため、哲学の発展のため、ライフワークの完成のために行為する。こうした理由は、幸福からも道徳からも区別される、行為の理由のための第三の領域を形成する。家族のために見舞いに行くとか、哲学の発展のために努力するとき、私たちは利己的動機に従うわけでもないし、道徳的規範に従っているわけではない。むしろそれらの目的は、自己の幸福を損なうことや、道徳に反する行為を要求することさえあるだろう。
これら愛の理由を与えるものが、人生に意味を与えるものであるとされる。ウルフは、人生の意味を、しばしば無視されがちな行為の理由のための重要な源泉のひとつとして注目させる。後半では、人生の意味と道徳の関係も議論されているが、この辺もおもしろい。
つぎに、ウルフの特徴は、人生の意味に、主観的ファクターと客観的ファクターの両方を求めることだ。これを彼女は、「意味は主観的魅惑と、客観的魅力が出会うときに生まれる」(p.221)というキャッチコピーで表現している。人生の意味を与えるようなものは、まず、人生を生きる当人が目指すようなものでなければならない(主観的魅惑)。さらに、当人はそれを単なる好みとしてではなく、目指す価値のあるものだからこそ追求する(客観的魅力)。意味を与えるものは、私たちがそれを欲するから価値をもつのではなく、欲求とは独立に価値をもつからこそ、それを欲求する理由があるのだ。
さらに、愛は、それにふさわしくないものに向けられているがゆえに、誤っていることもありえる。例えば、人生を数独にささげることは、人生に意味を与えないらしい*1。ここは論争的なポイントのひとつであり、後半でさまざまに擁護される。