ベネター「なぜ生まれてこない方がよいのか」のレジメ

先日の勉強会のレジメです。

  • ベネター「なぜ生まれてこない方がよいのか」

https://docs.google.com/document/d/1OlmJrP2kpYkkX82za6wGjMuPqcmpIoUlD63yLd6aHbE/edit


ベネター先生によれば、すべての人は(より正確には感覚をもったものはすべて)生まれてこない方がよい。すでに生まれてきた人を殺すべきではないが、もうこれ以上新しい人を生むべきではないし、人類は産児制限による段階的絶滅にむかうべきである。
この論文では、この驚くべき見解がなぜ擁護されるのかを説明している。ちょっとこの結論には賛成しがたいが、非常に興味深い論点もいろいろと含んでいる議論である。


なおベネターは、苦痛と快楽に対する以下の非対称性が存在すること、そしてそれを認めると、「つねに生まれてこない方がよい」という結論が導かれるとしている。

  • (3)苦痛が生じないことは、誰も享受する人がいないとしても、良い
  • (4)快楽が生じないことは、それによって剥奪される人がいないならば、悪くない


したがって、

  • (a) 議論の全体は(3)と(4)の非対称性の擁護、
  • (b) および、その非対称性から非存在の優越を導く議論

の二段構成となっている。


個人的には、(a)は認めるけど(b)はあまり認めたくない。生まれてきた状態と生まれてこなかった状態の比較などできないのだから、「生まれてきてよかった」も「生まれてきてよくなかった」もどちらもまちがっているという立場に共感を覚える。