鈴木生郎・秋葉剛史・谷川卓・倉田剛『ワードマップ 現代形而上学』

ワードマップ現代形而上学: 分析哲学が問う、人・因果・存在の謎ワードマップ現代形而上学: 分析哲学が問う、人・因果・存在の謎


目 次

  • 序章 現代形而上学とは何か
  • 第1章 人の同一性
    • 1―1 人の同一性の問題
    • 1―2 同一性と変化
    • 1―3 身体説と記憶交換の思考実験
    • 1―4 心理説と複製の問題
    • 1―5 人の同一性は重要か
  • 第2章 自由と決定論
    • 2―1 行為についての二つの見方
    • 2―2 自由と決定論の衝突
    • コラム 量子力学と決定論
    • 2―3 両立論
    • 2―4 非両立論
  • 第3章 様相
    • 3―1 可能世界
    • コラム 事物様相と言表様相
    • 3―2 可能主義と現実主義
    • 3―3 本質
    • 3―4 対応者
    • コラム 可能的対象
  • 第4章 因果性
    • 4―1 ヒュームの影響
    • 4―2 規則性分析
    • 4―3 反事実条件的分析
    • コラム 因果関係の形式的性質
    • 4―4 普遍者の一事例としての因果関係
    • 4―5 事実因果説
  • 第5章 普遍
    • 5―1 普遍者の実在をめぐる論争
    • コラム 理論評価のための基準
    • 5―2 抽象名辞による指示とパラフレーズ
    • 5―3 普遍者にまつわる問題点
    • 5―4 唯名論と質的同一性
  • 第6章 個物
    • 6―1 具体的個物の存在論的還元
    • 6―2 普遍者の束説
    • 6―3 基体説
    • 6―4 トロープの束説
  • 第7章 存在依存
    • 7―1 存在依存の基本
    • 7―2 依存関係のいくつかの下位区分
    • コラム フッサールと存在依存
    • 7―3 存在依存の定義に関する問題点とその解決策
    • 7―4 必然性と本質
    • 7―5 存在依存と付随性
  • 第8章 人工物の存在論
    • 8―1 人工物のあり方
    • 8―2 伝統的カテゴリー体系の不十分さ
    • 8―3 存在依存のきめ細かな区分
    • 8―4 存在依存関係を用いたカテゴリーの個別化
    • 8―5 伝統的なカテゴリー体系を超えて
    • コラム インガルデンと現代
  • 終章 形而上学のさらなる広がり
    • 9―1 本書で主題的に扱わなかった形而上学の問題領域
    • 9―2 形而上学と密接に関わる他の分野
    • おわりに
    • 現代形而上学をさらに学ぶための文献案内

出版社紹介ページ
http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/978-4-7885-1366-2.htm

本書は日本語で書かれた分析形而上学のはじめての包括的な入門書である。文章は平易でわかりやすく、明快でつぼをおさえた書き方になっている。入門書でありながら、比較的ハードな話題も紹介しているし、何よりすばらしいのは、注などで参考文献やより進んだ話題なども紹介しており、「ここから先へどうやって進めばよいか」についても目配せがしてあるところだ。本書を読むだけでも形而上学の基本的な議論は抑えられるし、さらに詳しく知りたい人にとっても役立つ本だろう。個人的には、個体の章などあまり詳しくない分野は大変勉強になったし、ある程度読んで知っている分野も、参考文献が豊富で、「こんな文献があるのか」などいくつか発見があった。
また、「人と同一性」「自由と決定論」「様相」などのよく論じられるテーマだけではなく、「人工物の存在論」のような比較的新しいテーマも紹介しているあたりも意欲的である。
マストバイと言える。