清塚邦彦「絵画的な描写について: 哲学的分析」

http://repo.lib.yamagata-u.ac.jp/handle/123456789/2855
描写の理論のサーヴェイ的な論文かな。
訳語の選択が参考になったので早く読めばよかった。内容は、個々の立場にもう少し踏み込んでほしかった気がする。特に最近の新しいバージョンの類似説には触れてほしかった。



清塚さんは、私たちが絵の中に見るものを「像」と呼ぶ。絵画的描写は、絵が像を呈示することを指す。
描写の理論は様々にあるが、幻視説、類似説、規約説などについては、この像に対して消去主義的な態度を取るものとして退けている。
一方、清塚さん自身は、像の経験を中心に置く理論として認知説を採用している。認知説というのは、私たちが絵の中に像を見るために用いられる能力は、日常、対象を再認するのに用いられるのと同じ認知能力であるという説だ。
普通は認知説とは区別されるウォルハイムの「内に見る」説を認知説の一種と位置づけ、岩の割れ目に顔を見るような認知能力の誤作動を図像認知の核に置いているのが独特だろうか。
また、図像の内容を規定する「正しさの尺度」として、制作者の意図などではなく、ウォルトンの言うような受け手の側のごっこ遊び的実践を採用しようと提案している。