Henry John Pratt「マンガにおける物語」
マンガにおける物語について、文字、絵、コマから分析している。それほど新しいことを言っているわけでもないが、まとまっている。
時間が経過するコマ継起と時間が経過しないコマ継起があるというのは、前に書いた前景/背景の話とも関連しそうなので、文章の場合と比較するとおもしろいかもしれない。
http://philpapers.org/rec/PRANIC
Pratt, Henry John (2009). Narrative in Comics. Journal of Aesthetics and Art Criticism 67 (1):107-117.
- 1. 序
- 2. 文芸的次元
- 3. 図像的次元
- 4. マンガ独自の物語
マンガにおける文字の要素
- 吹き出しのセリフ
- モノローグ、ナレーション
- 音喩(ドッカーンみたいな)
- 看板などの文字
看板などの文字以外はキャラクターからは見えない。
文字はコマの中の時間の経過をコントロールする。セリフや音喩によって、そのコマの中での時間の持続が表現される。
また読者の読むペースは文字によって規定される。
マンガにおける絵の要素
ひとつのコマの中で言うと…
- 誰のセリフかを決める
- 背景や状況の描写
- ムードや感情や雰囲気の表現
- キャラクターの感情や心理の表現
コマの連続として見ると…
マクラウドの「クロージャ(閉合)」。
読者はコマとコマの間を補完しつつ読む。
クロージャによって複雑な物語の表現ができる。
コマとコマのつながりには、時間が経過するタイプとしないタイプのものがある。
Prattによれば、マンガ独自の要素としてコマの構成がある。コマの配置などを工夫することで、同時になされる複数の行為を容易に描ける。この辺りは映画にはない要素。