Stich, Stephen P. & Nichols, Shaun (2000). A cognitive theory of pretense. Cognition 74 (2):115-147.
- 序
- 例とフリの特徴
- フリをはじめる: 初期仮定
- 推論による発展
- 非推論的発展
- 適切なフリ行動の生産
- 認知的隔離: フリ者の後続する認知状態へのフリの限定的な効果
- フリに潜在する認知メカニズムの理論
- 他の理論との比較
- フリのオンラインシミュレーション説
- ゴードンとバーカーのフリ理論の問題と修正
- フリのメタ表象説
- パーナーの説
- フリのオンラインシミュレーション説
- 結論
想像やフリに関する認知モデルを提案した有名な論文。
著者らによれば、フリには以下のような特徴がある。
- 初期仮定: フリは「これはお茶会だ」「このバナナは電話だ。電話をかけてみよう」といった初期設定によって開始される。
- 推論による発展: ごっこの中でも基本的な論理的推論などは成り立つ。また、人が元々もっていた信念もごっこの中に持ち込まれる。
- 非推論的発展: ごっこに対して様々な仮定を付け加え、発展させていく(ウェイターごっこの中で、新しいメニューを考えるなど)。
- 行為遂行: フリは行為を引き起こす。
- 認知的隔離: ごっこ遊びが終わったら、すみやかにフリを受け入れることはやめ、通常の信念を復帰させることができる。
著者らはまず人間の心に関するアーキテクチャーモデルをとる。これによれば、人間の心には、信念、欲求という相異なる表象状態があり、これらはその機能によって区別される。また心には、信念ボックスや欲求ボックスといった貯蔵庫がある。特定の内容の信念をもつということは、その内容の表象トークンを信念ボックスの中にもつということだ。また、特定の内容の欲求をもつということは、その内容の表象トークンを欲求ボックスの中にもつということだ。
さらに著者らによれば、それらに加え、可能世界ボックスという貯蔵庫もある。ある内容を想像するとか、ある内容のフリをするということは、その内容の表象トークンを可能世界ボックスの中にもつということだ。なぜ信念や欲求とは別に、想像・フリのための貯蔵庫が必要かと言えば、フリは、通常の信念からは完全に分離されたものであるから(ごっこ遊びが終わればただちに取り除くことができる)。
また信念との混合を説明するためにアップデーター、シナリオの非推論的発展を説明するためにスクリプトエラボレーターなどのメカニズムが要請される。最終的には以下の図のようなアーキテクチャーが想定される。