Michael Jacovides「複合的出来事としての経験」

http://philpapers.org/rec/JACEAC
Jacovides, Michael (2010). Experiences as complex events. Southern Journal of Philosophy 48 (2):141-159.
http://web.ics.purdue.edu/~mjacovid/Experience.pdf

  • 1. 構成要素
    • 1.1 出来事としての経験
    • 1.2 経験の主体
    • 1.3 基礎出来事と基礎状態
    • 1.4 外的な構成要素
  • 2. 場所と時間
    • 2.1 経験の場所
    • 2.2 反論への反駁
    • 2.3 経験の時間

経験はどのような存在者かを扱う論文かな。なかなかおもしろかった。経験は外的な何かを表象するものではなく、複合的な出来事だという立場を擁護している。


この立場では経験は頭の中で起こるものではなく、外的なものを要素として含む。例えば、晴れた日に野球をする経験は、野球のゲームをその一部に含み込んでいる。経験は外的なものを表象するのではなく、外的なものを含む。
経験の構成要素は以下の三つ。

  • 1. 経験の主体
  • 2. 基礎出来事
  • 3. その他主体が気づいているいろいろなもの

太郎が晴れた日に野球をする経験の場合

  • 1. 経験の主体である太郎
  • 2. 基礎出来事である野球
  • 3. 太郎が気づいているいろいろなもの(晴れていることや、気持ちよく汗をかいたことなど)

3は曖昧だが、著者は、「主体が気づいているものの内、基礎出来事を持つことがどのようであるかのストーリーを語る際に関連するすべてのもの」と分析している。
ここで著者は、経験がひとつであることを説明するためにストーリーの統一に訴えている。天気や汗や疲れを、野球の経験としてひとまとめにするものは何なのかという重要そうな問題が背景にあるわけだ。
ここは私としては自分の発表にも関連するし、非常に興味あるところだが、あまりこれ以上の分析は与えられていない。