まえおき 描写の哲学(絵・画像の哲学)における二視覚システム理論について調べたのでまとめる。最近 id:Aizilo さんが近年の描写の哲学の論点を紹介していたので、まあこれも最近のトピックということで。 描写の哲学、再訪:触図からディープフェイクまで -…
「ふつうの暮らし」を美学する 家から考える「日常美学」入門 (光文社新書 1317)作者:青田 麻未光文社Amazon 青田麻未『「ふつうの暮らし」を美学する 家から考える「日常美学」入門』という本が光文社新書から出ました。日常美学という美学の一分野の入門書…
ダントーの「アートワールド」は芸術制度のことではないというのを、人に説明しようと思って、ダントーのテキストについてまとめていた。 実際ダントーの立場を説明しようと思うと、いろいろ大変なのだが、ダントーの「アートワールド」が制度ではないという…
前回はこちら。 Fatalism in American Film Noir: Some Cinematic Philosophy (Page-Barbour Lectures) (English Edition)作者:Pippin, Robert B.University of Virginia PressAmazon 前回説明したように、Fatalism in American Film Noirでは、フィルム・ノ…
ロバート・B・ピピンという哲学者がいる。ヘーゲル研究で有名だが、実は映画の本をたくさん書いている。私はフィルム・ノワールが好きなので、ピピンがフィルム・ノワール論を書いているのを知り、さっそく読んでみた。とりあえず一章まで読んだので紹介する…
リベラリズム: リベラルな平等主義を擁護して作者:ポール・ケリー新評論Amazon ポール・ケリー『リベラリズム』(佐藤正志, 山岡龍一, 隠岐理貴, 石川涼子, 田中将人, 森達也訳)を読んだ。 英語のKey Conceptシリーズの「リベラリズム」の巻の翻訳。 政治哲学…
『判断力批判』の一部で、カントは「天才論」というかたちで芸術作品の創造について論じている。それは『判断力批判』全体のプロジェクトの中では、決してメインのテーマではないのだが、それなりにおもしろい主題となっている。 判断力批判作者:イマヌエル…
メタゾアの心身問題――動物の生活と心の誕生作者:ピーター・ゴドフリー=スミスみすず書房Amazon ピーター・ゴドフリー=スミス『メタゾアの心身問題』塩﨑香織訳、2023年、みすず書房 『メタゾアの心身問題』を読んだ。前著『タコの心身問題』を楽しく読んだ…
ゲシュタルト知覚またはアスペクト知覚について自分なりに説明してみる。なぜこの記事を書こうと思ったか。ゲシュタルト知覚の話は、別にそんな難しい話ではないはずなのだが、なぜかピンと気づらいものらしく、理解していない人が結構いるという印象をもっ…
Apt Imaginings: Feelings for Fictions and Other Creatures of the Mind (Thinking Art) (English Edition)作者:Gilmore, JonathanOxford University PressAmazon ジョナサン・ギルモアのApt Imaginingsを5章まで読んだので紹介する。本書はフィクションの…
ヴィンセント・トマスの"Creativity in art"および周辺の文献をちょっと調べたので備忘録的に残しておく。 Tomas, Vincent (1958). Creativity in art. Philosophical Review 67 (1):1-15. ヴィンセント・トマスのこの文献に関しては、少し前に出た村山正碩…
Ulysses Unbound: Studies in Rationality, Precommitment, and Constraints (English Edition)作者:Elster, JonCambridge University PressAmazon ヤン・エルスター(『酸っぱい葡萄』*1の人)のUlysses Unboundという著作のIII部が芸術論らしく、ちょっと興…
Strohl, Matthew (2018). Art and painful emotion. Philosophy Compass 14 (1):e12558. いわゆる「苦痛を与えるアートのパラドックス」に関するPhilosophy Compassのサーベイ論文を読んだ。サーベイなのでそれほど期待せずに読んだのだが、思ったより全然お…
前回エントリ 道徳的判断は程度を認めない0/1の判断なのか - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ Xで宣伝するのを止めてしまったら、いまひとつ反応がなくてつまらんなと思ったけど、なぜか逆説的にブログを書く気がわいてきた。 前回の記事は、「倫理学ではこ…
なぜ美を気にかけるのか: 感性的生活からの哲学入門作者:ドミニク・マカイヴァー・ロペス,ベンス・ナナイ,ニック・リグル勁草書房Amazon 遅くなってしまったが、訳者の森さんから頂いた『なぜ美を気にかけるのか:感性的生活からの哲学入門』の感想を書いて…
人と話していて、道徳的判断って、基本的には程度を認めない0/1の判断ですよね……と言ったら意外と理解されなかったので、もしかしてこれってあまり理解されていないことなのか?と思って、ブログ記事を書くことにした*1。基本的に、倫理学に詳しい人なら知っ…
The Moral Nexus (Carl G. Hempel Lecture Series Book 9) (English Edition)作者:Wallace, R. JayPrinceton University PressAmazon Wallace, R. Jay (2019). The Moral Nexus. Princeton University Press. R・ジェイ・ウォレスの『モラル・ネクサス』とい…
あれもこれも紹介したいと思っているうちに発売日をすぎてしまった。何も書かないのもあれだなと思ったので、せめてこれまで書いたエントリのまとめなどあげておきます。余裕があればまた紹介記事も投稿します。 第一回: モンスターの作り方 第二回: 歴史的…
第一回 第二回 第三回 第四回 第五回 ノエル・キャロル『ホラーの哲学』の翻訳が出ます。発売日は2022年9月24日です。 filmart.co.jp ユリイカ2022年9月号 特集=Jホラーの現在にも書いています。 www.seidosha.co.jp ついに表紙画像が出ました。ごくまれに…
第一回 第二回 第三回 第四回 ノエル・キャロル『ホラーの哲学』の翻訳が出ます。 filmart.co.jp ユリイカ2022年9月号 特集=Jホラーの現在にも書いています。 www.seidosha.co.jp 紹介 第一章のホラーの定義の箇所を紹介しようと思います。 ホラーの定義と…
ノエル・キャロル『ホラーの哲学』の翻訳が出ます。 filmart.co.jp ユリイカ2022年9月号 特集=Jホラーの現在にも書いています。 www.seidosha.co.jp 第一回 第二回 第三回 紹介 - 「ホラー」の世代差 短かい小ネタを書いた方が読む方も書く方も楽でいいだ…
『ユリイカ2022年9月号 特集=Jホラーの現在』が出たので、掲載した論考「Jホラーの何が心霊実話なのか?——実話怪談、ドキュメンタリー、心霊写真」の補遺的な話を書く。 ユリイカ2022年9月号 特集=Jホラーの現在 ―伝播する映画の恐怖―作者:高橋洋,大島清昭…
第一回 第二回 ノエル・キャロル『ホラーの哲学』の翻訳が出ます。 filmart.co.jp ユリイカ2022年9月号 特集=Jホラーの現在にも書いています。 www.seidosha.co.jp 紹介 - ホラーの詩学 断片的にいくつか紹介してきましたが、『ホラーの哲学』を、トータル…
第一回 ノエル・キャロル『ホラーの哲学』の翻訳が出ます(1) - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ ノエル・キャロル『ホラーの哲学』の翻訳が出ます。 filmart.co.jp ユリイカ2022年9月号 特集=Jホラーの現在にも書いています。 www.seidosha.co.jp 紹介 今…
まえおき ノエル・キャロル『ホラーの哲学』の翻訳が出ます。出版社の告知ページも出たので宣伝していきます。 filmart.co.jp たまたまタイミングが合って、ユリイカ2022年9月号 特集=Jホラーの現在にも書いています。 www.seidosha.co.jp このふたつの仕…
例年、新しいものはあまり読んでいないのだが、今年は比較的新しいものを読んだ気がする(小説限定)。 2021年に出たもので良かったもの 6600万年の革命 (創元SF文庫)作者:ピーター・ワッツ東京創元社Amazon 爆弾魔: 続・新アラビア夜話作者:R・L・ステ…
第三十三回文学フリマ東京に参加します。去年11月の文学フリマでは製本が間に合わずパイロット版としてコピー誌を出しましたが、そこにさらに何編かを追加した増補改訂版の『幽霊屋敷小説集』が出ます。 『幽霊屋敷小説集』表紙 項目 内容 開催日 2021年11月…
Frost-Arnold, Greg (2017). The Rise of ‘Analytic Philosophy’: When and How Did People Begin Calling Themselves ‘Analytic Philosophers’? In Sandra Lapointe & Christopher Pincock (eds.), Innovations in the History of Analytical Philosophy. P…
Fiction: A Philosophical Analysis (English Edition)作者:Abell, Catharine発売日: 2020/06/10メディア: Kindle版 まえおき: フィクションの哲学の現状 最近出版されたキャサリン・エイベルのFiction: A Philosophical Analysisという著作を紹介したいのだ…
(この記事は書きかけでしばらく放置していたのだが、何となく機運が高まったので、公開することにした) 理解とディープラーニングの対立? 現在は第三次AIブームということで、毎日のように、AIやディープラーニングに関連するニュースを耳にする──これはまあ…